Headphone AMP の電源を考える

Virtual Ground Power Supply


ヘッドフォンアンプを作る場合、しっかりした電源を用意するつもりなら トロイダルトランスを用いて 正負電源を用意するのが王道だとは思うのだが、手軽にだとか今あるACアダプタを使いたいとか、電池駆動にしたい、ケース組込のためにシンプルな方法にしたい等 思った時には、単電源で済ませたくなる場合もあります。


その場合、単一電源の電圧を 1/2 に割って、そのセンターを「仮想グランド」にするという方法があります。 電源を他の回路と共用する場合は、問題も多く使いたくない手ですが、ヘッドフォンアンプ専用電源と言うことで割り切れるのであればとても手軽に実現できます。 TIから、TLE2426という専用のICも出いますが、このレールスプリッタICを使った仮想グランド電源はとても簡単に実現出来るので、どの程度使いものになるのか 検討・実験してみることにしました。 


TLE2426を使った電源回路をオペアンプを使って等価に書くと下図のようになります。 つまり 【オペアンプをバッファとしてその出力をグランドに見立てる回路である】、 といえます。


    

   ・回路としては、レールスプリッタ IC のTLE2426  1個と、 コンデンサ 3個で構成できます。 
   ・電解コンデンサの容量については C901は 大き目でも良い(1000uF〜) のですが、C902/903については 
    スプリッタ IC の応答性を確保して置いた方が良いと思われるので、10uF〜100uF程度が Good かも。



  ・下の写真が、レールスプリッタ IC TLE2426の実物写真です。 
  ・TO-92型ですから2SC1815等の小信号トランジスタと同等形状です (8Pin-DIP型も存在)

                   

最大定格は、Vi Maxが 40V、 Io Maxが 80mA 、許容損失(TA=85℃)が、403mW である。 
従って、入力の電源電圧を、24Vとした場合、 

  ” 403mw ÷ 12V = 33mA ” が負荷に対して供給できる最大電流 と いうことになります。  

         (スペックシートの 20mAというのは電源電圧が40V(±20V)の場合が相当)



結論を先に見る Jump






さて、ヘッドフォンアンプでは最低、どの位の電流が必要だろうか?

お手軽電源を作ることが目的なので、TLE2426にバッファ追加なしで
使えそうかどうか検討してみます。 バッファ無しでは使えないようなら
TLE2426を使う意味(旨味)は 少なくなる と言えます。

2つのヘッドフォンを例に考察してみましょう。  手持ちの MDR-F1 と
多分 売れ筋と 思われる MDR-SA1000 で 検討してみます。

 

両者ともに、感度 ( 1mW入力時の音圧レベル)が、100dBである。  100dBとは、かなりうるさい レベル (電車の通るガード下が相当するらしい)であり、音楽の再生レベルとしては十分と思われるので、1mW以上の出力が得られるかどうか、で 実用となるかどうか判断できます。

 ◆ 33mA の電源で 取り出しうる電力は

  ・MDR-F1   : 0.033*0.033*12 = 13mW
  ・MDR-SA1000: 0.033*0.033*70 = 76mW


 ◆逆に、1mW 得るにはどの程度の電流が必要かというと

  ・MDR-F1   : √0.001/12 = 9.2mA
  ・MDR-SA1000: √0.001/70 = 3.8mA



上記の計算は L/R トータルなので、注意下さい。 
ともあれ 33mAの電流が供給できるなら ヘッドフォンアンプ用としては 実用になる可能性が高いことが計算上、 確認できました。 


但し、ヘッドフォンアンプ回路のアイドリング電流如何では、「絵に描いた餅」 となる可能性も十分あります。 



(注)

33mAは実効値として計算していますので、電源としては 47mA p-p が流せることを 見込んでおく必要があります。  つまりヘッドルームの問題ですが、上記の場合 条件の悪い 70Ω負荷時で 170mA流れますので 問題ありません。   電源電圧が、 ±3.3V 以下になるような場合 上記の考え方は成立しません。
また、LEM49600を使用する場合の ロス電圧は、10mA時に1.6V程度 ありますので、±5Vが最低限となります。










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Virtual Ground Power Suplly
実 験 編
以前紹介した、LME49600ヘッドフォンアンプを使って
レール スプリッタ式 電源の実力を測定してみました。

対戦相手は、LT1054を使ったDC-DCコンバータ式電源
で ±12V100mA の出力が 定格です。

電源用に使う ACアダプタは、16V1A である。
TLE2426電源基板
ACアダプタの上に乗っている、ユニバーサル基板の切れ端
で 作ったのが、TLE2426を使った 仮想グランド 電源基板。

ほんとに これで動くの? と思えるほど 「 シンプル 」。 
電解コンデンサは、3個とも 25V100uF を使用している。


電源電圧が、DC16Vなので取り出せる電流は上記計算例から
定格電流 = 403mW ÷ 8V = 50.3mA ということになりますので
多少、出力は増える方向になります。




出力を測定した結果、1KHz 1%歪み出力は以下の通りでした。
(両チャンネル同時駆動しています)


30分ほど連続運転してみましたが、TLE2426は熱くはなるものの
保護回路が働いて電源電圧低下するということはありませんでした。

一方、TLE1054の方は 温度上昇や出力電流によって保護回路が
働きますので 上記の最大出力を連続して出す事は出来ません。
TLE1054をパラレル運転して電流を増やさないといけないようです。


しかし、いずれにしても 1mWの出力が得られれば 当面の音量は
十分確保出来るだろう、という 目論見ことからすると どちらでも
LME49600 ヘッドフォンアンプ用の電源としては使用可能です。



【 結 論 】
TLE2426を使った
仮想グランド式電源は
LME49600用の電源として
十分実用 となる。










TLE2426基板例 アップ写真

極めて シンプル です


これだけ シンプルだと、もう少し何とかして あげたい
(コンデンサのアップグレードとか) と思ったり します










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