トランジスタ回路で LTSpice を使う
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まずはトランジスタを1個 使った例から

DIR9001をつかったDAI
SPDIFのレベルは、0.5-0.6V程度しかありませんから、TTLレベルのICにインターフェースする場合、アンプする必要があります。  例えば、BBのDAIチップである DIR9001等を使う場合が相当します。

方法としては、Mi-Takeで既に商品化しているSPDIFバッファ(74HCU04等CMOSバッファをつかってレベル変換)の方式があります。 しかし、74HCUをDAI基板に積むのはちょっと気が進みません。 そんなことをするくらいなら、SPDIFバッファ基板はすでにあるわけですから、DAI基板はTTLレベルのままでバッファ基板は外付けとして使用すればいいわけで、もっと別な方法が求められます。 


SPDIFの規格は以外と知られていません。


SPDIF信号のについての情報が少ないので、以下にAESとともにまとめておきます。


ちなみに帯域は、96kHz 2ch のオーディオ信号を伝送する場合、 NRZ 換算で
96000 * 2 * 64 = 12.288Mb/s  (64bit/sample)
CD-DA(44.1KHz)の場合は、5.6MHz です。
さて、TTLの"H"レベルは 2Vですから 12.3MHz帯域で 12dBほど増幅すれば間に合いそうです。

トランジスタで増幅する場合、エミッタ接地1段増幅では位相が反転してしまします。 SPDIFでは気にしなくても良いのですが ここは同相にこだわるとしても、2段増幅するほどの要求ゲインでもありません。 初歩のトランジスタ回路を思い出しましょう。 ベース接地増幅なら入出力の位相は同相です。 早速ベース接地での増幅回路をシミュレーションしてみます。  


  段階を追っていては埒があかないので、結論の回路とシミュレーションデータです。

実験回路


周波数特性


Vcc=3.3V,  Vin=0.5Vpp, 1uS周期 時の出力





<補足説明>

最初は、NPN の 2SC1815で進めていました。 しかし、実際に回路を組んで
やってみたところ、NPNをつかう場合動作点が浅いとトランジスタが完全に
ON しきれない状態が発生します。
 
つまり、TTLの"L"レベルである 0.8V以下の確保が難しいのです。それは
シミュレーション時には気づかなかったのですが、[エミッタ抵抗 + Vsat] の問題です。 


NPN回路:アンプとしての動作点を理想的に設定すると
"L" レベルが1.5V以上ある

画面の黄色い矢印1がGNDレベルです


NPN をつかって、エミッタ抵抗を小さくしたり 電流を流し飽和領域に
持っていこうとすると下の例のように、波形が崩れてしまいました。
                                                 
 "L" レベルを下げるために電流を流したとき




さてさて、ベース接地回路では難しいか ・・・・ と
あきらめてはいけません。

要するに電流が少くない状態で限りなく 0Vに近づけるには
トランジスタの極性を変えればいいんです。

ということで、2SA1015 に変更。
PNPの場合、"L"レベルは、Vsatではなく Ic = 0 ですから
PNPの回路では、苦もなく "L" レベルが確保できました。



だだし、PNPの場合はVsatは"H"レベルに効いてきます。
電源利用率はシミュレート上では、90%位はあるのですが
実際は70-75%位しかないので PNPの場合、Vcc 3.3Vで
"H" 出力 2.0V以上を確保するのは厳しくなります。 
Vcc 5Vでつかうのが望ましいという結論です。




上記の例からわかるように、 spice も基本的な方針決めをする際には
役に立ちます。NPN=>PNP置き換えの場合の回路設定のあたりなど
簡単にできます。 が、最終的な詰めは実際の回路に組んで見ないと
分からない部分もある、ということを念頭に置いおく必要性があります。






上記の結論の回路を組み込んだ例。

DIR9001 DAI 実験基板 (Base接地Amp付き)




DIR9001 DAI については、別項で詳細を紹介いたします





トランジスタ・ディスクリート DC アンプ

 
<部品キットの使い方 解説ページへ >   

 次に、トランジスタを複数個使う ディスクリート DCアンプ の例です

 所謂  ディスクリートDCアンプであり、種々の宗派が存在します。
 現在DCアンプをディスクリートで組むというのは、商業ベースでは 極めて少数派で、
 ほとんどが、アドバンスド・ハイアマチュア 言い換えると オーディオ・オタク族がコアに
 なって、各種の回路が提案されています。 ここから発信されるご神託を無視できない
 メーカー製・超高級機も存在します。



 DCディスクリートアンプで著名なものに ”金田式”と呼ばれている回路があります。 金田教授が設計しているアンプは音が良いらしいいのですが、手に入らないトランジスタをつかうことによって カリスマ性を保っているのではと勘ぐりたくなる、 困った アンプではあります。(追試ができないという意味に於いて)   従って、ご教本は数冊持っているが 未だ 改宗していないのが現状です。

                  


 さて:
 ディスクリートアンプ入信の初心者にお勧めなのが、こちらの定本シリーズです。 
 続編版と合わせ、OPアンプ回路版も同時に揃えると、立派な CQ教信者になれる。
  (CQ出版へのお布施 しめて \7850税込)

                 

 さて、このトランジスタ回路の設計に オペアンプを設計する例が載っています。 「Ωの法則」 という ご神託さえ分かっていれば という設計手法であり 「まねすれば出来るディスクリートアンプ設計」 といえます。 そこで、金田回路も含め、取っ替え引っ替えLTSpiceでシミュレートするのですが、いかんせん指定されたトランジスタのパラメータが無かったりします。 各メーカからパラメータを集めるも、なかなか思ったとおりにいきません。 結論として、NPNは2SC1815、PNPはSA1015に統一して 回路方式だけで 「主観的・優劣判定」 で事を進める事としました。 

 ■なぜ、1815と1015なのか? 
  ここには、秋月教 が存在します。 一流メーカ製の立派なトランジスタがとても安く手に入ります。 
  安い = 粗悪 ということには あたりません。
  Dig*Ke* で、1個単位で買うと @60 もする 高級品なのです。


  ・・・・・ 合掌






  設計指針
   1. オープンループゲイン 80dB以上 (OPアンプの常識 ? )
   2. アイドリング電流  10mA以下  (±15V電源時 300mW以下)
   3. 最大出力      12Vpp   (電源効率80%以上)
   4. ユニティgain時位相補正は1ヶ所 (安定度)
   5. 使用トランジスタは、 2SA1015/2SC1815 限定

   を、設計の縛りとして置いておく。 (目標がない設計はあり得ない)






結論の回路

spiceの回路画面はノード数が増えると見にくいので、bschでのショットを載せておきます。


どこにでもありそうな、差動2段の回路ではありますが、LTSpiceでのシミュレーション
を繰り返しているうちにたどり着いた回路であり、たぶん誰が作ってもこんな形になるだろう
といえる、 原型回路(Primitive Cercuite) だと思われます。


ファイナルの石を、キャンタイプに置き換えると音が良くなるかも・・・は基本形ができてからのお楽しみ。



以下、検討経過である。



裸特性を回路別にグラフ化したもので、スタンダードDが上記最終型に相当する。

比較用に、OPA2604やNJM4558のデータも引用して載せてある。 
高域の落ちが早いのが分かるが、実際これだけ落とすのは難しい。



最終的には、定数を変えたため Gainは98dB程度にアップしました。
(裸ゲインは初段の差動バランス用の抵抗値で大きく変わります)



差動2段にした理由は、CMR値が1段では取れないからである。
差動2段では、120dB前後取れるのに対し、1段では95dB程度であった。




SR のシミュレーション結果



しかし、この特性を出すために位相補正はかなり軽めに押さえた値でないと出ない。

周波数特性の暴れ(25MHz近辺)が出るため、実機での確認と実際の使用時の
Gainの兼ね合いで補正値が決まるため今回は理想値ということでここで留め置く。
(初段のコレクター間 470P+100Ω、 終段のベース 10P+100Ω付き)

なお、入力の周期を1MHz相当に上げるとspiceの動作が変わってくる。
それまでは出ていない別の不安定要素が発生するため 定本での解説通り100KHzとしています



 < 参考 >
 部品キット相当で LTspice 実行画面です。 オープンループ時 と 閉ループ時の 2つについて 同時に見られるよう 回路を 2組用意して実行した例です。


  ・ 回路(上) オープンループ回路
  ・ 回路(下) NFB有り回路

 


  ・ 緑:NFBオープン特性
  ・ 赤:NFB有りの時(Gain=10dB)

 






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