PCM179x ファミリを使いこなす         .
DAC 入門講座


何故 DACブロックがオーディオシステムの中で重要な位置を占めるのか。
それは 「 デジタル − アナログのトランスデューサ 」 だからと考えます

変換する時が 一番 癖(個性) が出やすいのです。

ヘッドフォンやSPがわかりやすい例です。  電気エネルギーを音響エネルギーに変える仕事は かなり明確な 個性を出していることを 皆さんご存じと思います。 つまり DACも 音の傾向を左右する 大きな要素なのです。

mi-takで提供している基板の DACチップは BurrBrown(BB)製 です。 Audio用DACメーカは その他CirrusLogic, Wolfson 等がありますが BBは所謂、真空管で言うところの Western Electric ・・・ だと 勝手に思い込んでいます。 BurrBrown弄ばずして DAC語るなかれ。 かな

BurrBrownは色んなDACチップを製品化していますが、中でも PCM179xファミリは、最高クラスの性能を持つ DACチップです。 さらにその中から、電流⇔電圧変換部 を外に出した 1792/1794/1796/1798 を使用しています。 ここに お好みのオペアンプを使用して 好みの音に仕上げようという狙いです



BurrBrown No.1、No.2 の PCM1792/4 と PCM1796/8 を使ってみませんか


         179x ファミリ概要
       



DACの位置づけ

音楽を楽しむためのシステム構成要素には、色んなブラックボックス(BB)があります。
そのブラックボックスは、使用する人の経験や知識によって構成・内容が変わります。

  =>    .

CDを
再生する

 一般の人 レベル0 (高級ラジカセ、オールインワン等)
=>  .

音楽を
楽しむ

ステレオ装置(全てBB)

 マニア レベル1. (セパレートオーディオ等)

CDP(BB)

AMP(BB)

SP(BB)

 マニア レベル2
  (システムコンポ)
CDP(BB) DAC(BB)
PreAM
(BB)
MainAMP
(BB)
cable SP(BB)

 マニア レベル3
(自作含む単品コンポ)
・ATAPI
Drive
・コントローラ
SPDIF
バッファ
DAI DAC ・セレクタ 
・ボリューム
・LineAMP
Power
AMP
cable デバイダ SP



このように、構成要素を少しずつ区切っていけば、自作できる可能性が高まってきます。  「木を見て森を見ず」 ということわざがありますが 「森ばかり見て木も知らず」 ということも良くあります。 今の政治は、「森も・木も・自分の足もとも見ず 雲を眺めていた」 というような とりとめのない状態が続いています。はやく我に還って欲しいものです。


さて、今回のお題であるDACですが、現在得られる素材(IC等)を考えると、DAIとDACの2つに分けて考えるのが手頃なレベルである、と思っています。これも分解を始めるとキリがありませんので、ここで一旦止めています。

現在の音楽音源の代表格である、CDPやUSB Audioからは、一般的に SPDIFと呼ばれるデジタル信号が得られます。 最近のホームシアター系の機器では、DTS5.1chやPCM5.1chサラウンド等々 豊富なデジタル信号の種類がありますが、ここではそれらの信号系は対象としません。 (今回はDSDも対象ではありません)  あえていうなら リニアPCM2.0ch に対応、シンプルに音楽を 楽しもうというケースです。 SPDIFは、一本の同軸ケーブルか 光ケーブルで信号を伝達しますので、Lch/Rchのデジタル信号2ch分と、ワードクロックが重畳された形で一本のケーブルに出力されます。 


                         参考:SPDIF/AES の規格
     



これを、音源データと再生用の同期クロックに分離・生成する仕事を受け持つのが 「DAI 」の仕事になります。 この生成された信号をここでは、PCMデータと呼ぶことにします。 PCMデータフォーマットは、右詰(RightJustified)、I2S、左詰(LeftJustified)等の形式がありますが、これは過去のDAC技術の発展過程で各社の都合によって制定されたものであり、特にどれかの形式に音楽再生上の有意差があるということはありません。 組み合わせるDACの都合で選択します。 PCM179x ファミリをDACに使用する場合、PCMの信号線は4本で構成され DATA、CHSL、BCK、SCK です。

   DATA: LchとRchのデジタル信号が交互に入っています。 
        16bit〜24bitのデータで構成されるのが一般的です。
   CHSL: 上記DATAは、LchとRchのデータが交互に入ってますので、
         それがどちらであるかを示すための信号。
   BCK:  上記データの同期クロック
   SCK:  高度な変換処理(デジタルファイルター等)用の高速クロック。 
        128Fs〜256Fs位が使われることが多い様です。


DAIで生成された、PCMデータから「DAC」でアナログ信号に変換します。 DAC内部でどんな細かい仕事がなされているかはここでは取り上げません。  δ-Σ変換デジタルフィルタ等 の技術内容は泥沼です。  嵌らないよう、ここはブラックボックスとしておきましょう。 

ともあれ、デジタル信号がアナログ信号に変わりました。 変えられる信号の種類にDACによって2種類あります。  出力のタイプが、「電圧信号」 なのか 「電流信号」なのか ということです。



独断と偏見の 「電圧出力モデルと電流出力モデルの比較」
特徴. 1 特徴. 2 特徴. 3 特徴. 4
電圧信号 出力が電圧の変化で得られる 特に変換は不要でアンプに出力可能 外乱ノイズに対して電流信号より敏感 (弱い) 電圧変換素子が内蔵されている
電流信号 出力が電流の変化で得られる 電圧に変換しないと、アンプにつなげない 外乱ノイズに対して電圧信号より鈍感 (強い) 電圧変換を外で行うので 好みの音作りが可能 かも

今回使用しているDACのチップは、PCM1792/1794/1796/1798 ですが、これらICは電流出力型の差動出力となっており、S/N比を稼ぐのに都合良い回路となっています。  また、外付けでI/V変換しますので この部分に お好みのオペアンプを使用することにより 音作りが可能になります。



                      ICの例:BB PCM1974 2個


さて、電流出力を電圧出力に変換しないといけないのですが、この部分をIV変換回路といいますが、定石通り オペアンプを使った変換回路を実装しています。 PCM1792/1794版の基板には、OPA2604(FET構成)を使用し、PCM1796/1798版には BBのアプリケーションノートで紹介されている、NE5534のDual版であるNE5532 を使用しています。 

                        PCM1794 output current
                             


さて、少し具体的に回路を見てみましょう。 DACのICから出てくる 電流出力は、差動で出力されますので Hot/Cold の2つの出力が出てきます。  これをそれぞれ IV変換しますが この時の出力電圧は、プラス側だけの出力(オフセットがついた状態)になります。 理由は、DACの電源が+5Vの単一電源だからマイナス側は出力出来ないということです。 ですから IV変換のオペアンプは常に (15V/2 ÷ 820Ω) x 15V/2 の負荷を駆動している状態に近くなりますので 発熱することになります。(但し駆動電流のゼロ点に依存します。PCM1792/1794ではBPZ時 6.2mAx820Ω)。 ある程度パッケージ損失を考慮してオペアンプを選択する必要がありますので、パッケージの温度上昇を確認して使用します。 (温度上昇についてはここを参照)

                      I/V変換回路例
       

2組のオペアンプによって、IV変換された差動出力(バランス出力)を アンバランス出力に変える回路が 3個目のオペアンプの役目です。 この回路によってゼロ点のオフセットがGNDに固定されますので、出力にはカップリングコンデンサは不要となります。 また、LPF回路も構成されているので、余計な高周波ノイズも取り除かれます。
PCM1794の場合、電流出力が7.8mApp ありますから (7.8mApp×820Ω)/1.414=4.52VRMS の出力が得られます。

さて、今度は少し具体的に DAI/DACそれぞれの基板を見ながら、動作させるための接続方法について見ていきます。基板には、入出力端子や電源コネクタ、設定用ヘッダーピンなどがたくさんあり少し複雑そうですが、最低限の動作をさせるには、設定ピンは出荷状態のままでOKです。 ここではBasicコースとして基本形を説明します。


  <DAI基板>
            CS8416を使った基板例
   

  電源: +5Vを同梱ケーブルを使ってCN103につなぎます。 
      このとき使用するケーブルは2芯コネクタの付いた短めを使います。
  SPDIF入力: CN101のP0と書かれた位置に、2Pケーブルで接続します。
        ケーブルは同梱されていませんが、PCショップなどで2ピンオーディオケーブル
        として販売されているモノが使用出来ます。
  PCM出力:CN102に同梱されている 5芯のケーブルを接続します。
       挿入方向は、青ケーブル(1本だけ色違い)側を、基板のシルク太い側に合わせます。

 でDAI、接続準備終わり。



 <DAC基板>
          PCM1794を使った基板例
   

  電源(1): +5Vを同梱ケーブルを使ってCN903につなぎます。 
      既に、上でDAIに挿入されているケーブルのもう一方です。
  電源(2): +5Vを同梱ケーブルの長めを使ってCN904につなぎ反対側を電源基板つつなぎます。
  電源(3): ±15V(12V)を同梱されている3芯ケーブルをつかってCN901に接続します。
        反対側を電源基板につなぎます。
  PCM入力:CN201に同梱されている 5芯のケーブルを接続します。
       挿入方向は、青ケーブル(1本だけ色違い)側を、基板のシルク太い側に合わせます。
       既に、上でDAIに挿入されているケーブルのもう一方です。
  アナログ出力: CN202に4Pケーブルを接続します。 PCショップなどで4ピンオーディオケーブル
        として販売されているモノが使用出来ます。

 でDAC、接続準備終わり、となります。




◆動作確認

  DAI/DACの基板は、デジタルジェネレータ DG-2432A を使用し動作確認後、出荷されます。

          

DG-2332A概要
・EIAJ CP-1201フォーマットに準拠
・出力端子 同軸端子、光端子(2系統)
・サンプリング周波数;96kHz、48kHz、44.1kHz、32kHz
・内蔵テストパターン:100種類
・ストパターンはRS-232Cにて書き換え可能




ユーザの方の、動作確認方法は 次の2つがお勧めです。
 (1)PC + USB Audio基板(SPDIF)  :
      ・Freeのテスト信号発生ソフト WaveGeneを使うのが手軽です。 
      ・WaveGeneで検索すれば作者のページが見つかります。
 (2)ATAPIコントローラ + CDドライブ(SPDIF):
      ・録音済みのテストCDをお持ちであればそれを再生します。
      ・現在手に入るチェックCDとしてはデンオン・オーディオ・チェックCDがあります。
       AMAZONでも扱いがあるようです。












さて、PCM1794とかPCM1798はメーカ製でいうと どのクラスのCDPにつまれているか
ちょっと調べて見ました。

メーカー製の場合、ソフト制御版の PCM1796が使用されているケースが多い様です。

  ・PCM1796 (ソフト制御版): アキュフェーズ DP-510 (\451k) パラレルで6個使用
  ・PCM1796 (ソフト制御版): CEC LT51XR (\162k)           2個使用
  ・PCM1796 (ソフト制御版): Rro-Ject CD BoxSE (\120k) 1個使用

  ・PCM1794          :   TDA TDA-D600 (\2,625k)  2個使用
  ・PCM1794          :   ATOLL CD200 (\252k) 1個使用








    BBのDACレパートリとスペック概要は こちら











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